「AIに仕様書を読ませれば提案書が作れる」と思っていた時期がありました。
でもTVを見ていて、それだけでは駄目だと気づかされました。
AI活用で差がつくのは、仕様書の前後です。
つまり、「自社理解を入れる前」と、「提案の方向性を上司と合わせる段階」でした。
行政向けのプロポーザル(提案書)作成でAIを使う人は、これからさらに増えると思います。実際、仕様書の要約や論点整理など、AIはかなり便利です。
ただし、使い方を間違えると、「早く作れたけれど通らない提案書」になる可能性があります。
この記事では、法人(行政)営業の現場でAIをどう活用すると実務に効くのかを、「仕様書の読み込みだけで終わらせない使い方」という視点で、実務目線で整理してお伝えします。
TVを見てた時にAIの使い方で“ぞっとした”話
この記事を書くきっかけになった話から書きます。
AIで仕事を早くしたいと思っている人ほど、たぶんこの話は少しぞっとすると思います。
TVを見ていたとき、AIを使って川柳を作った子どもたちが出ていました。そこで起きていたのが、「AIを使ったことで、まったく同じ川柳になっているケース」です。しかも、それで賞を取っていたのです。
その瞬間に思いました。
「これ、提案書でも起こり得るのでは?」と。
さらに、「実際に起こったら、笑って済む話ではないのでは?」とも思いました。
特に危険なのは、「仕様書が明確にあるプロポーザル案件」です。
入力が似る、条件が似る、求められる要件が似る。そうなると、AIの出力も似通ってしまう可能性があります。
つまり、AIに仕様書だけを読ませて提案書を作ると、他社と似た「特徴のない提案」になりやすいのです。
プレゼンの場で、自社とほとんど同じ内容を他社が提案していたらどうでしょうか。
選ぶ側から見て、自社で作った提案ではないのかな?などと思われたら最悪です。
学生の課題ならまだしも、法人営業、とくに行政営業では、提案の質は信用にも関わります。
だからといって、「AIは使わないで全部自力でやろう」という話ではありません。むしろ逆です。
AIは使ったほうがいいです。ただし、使いどころを間違えないことが大事です。
AIに提案してもらって「こんなものか」と思ったことありませんか?
使い方が大事です。その考えを整理したくて、この記事を書いています。
なぜ行政向けプロポーザルでAI活用できるのか
行政向けの提案書は、読み込む資料が多く、検討項目も多いため、作成に時間がかかります。
そのため、AI活用との相性はとても良いです。
たとえば、次のような作業はAIが得意です。
・仕様書の要点整理
・評価項目の抜き出し
・提案構成のたたき台作成
・過去提案との差分整理
・表現の言い換え、文章の整え
このように、AIは「下準備」と「整理」に強いです。
一方で、「その案件で勝てる提案の方向性を決めること」は、人の判断が必要です。ここをAI任せにしてしまうと、きれいにまとまっていても弱い提案になりやすくなります。
行政営業でのAI活用は、文章作成そのものよりも、まずは思考の整理を加速させる道具として使うのが効果的です。
仕様書を読み込ませるだけでは、AI活用とは言えない理由
「AIに仕様書を入れて要約してもらった」
「AIに提案書案を作ってもらった」
ここまでできると、AIをかなり使いこなせている気になります。ですが、実務ではここが落とし穴になりやすいです。
なぜなら、それは主に「仕様書の整理・要約」であって、「自社が勝つための提案づくり」とは別だからです。
行政案件のプロポーザルで重要なのは、仕様書を満たすだけではなく、「評価される形で伝えること」です。
同じ要件を読んでも、
・どこを強みにして押し出すか
・どの実績を前に出すか
・どの体制を安心材料にするか
で、提案の印象は大きく変わります。
つまり、AI活用の本番は「仕様書を入れる前後」にあります。
仕様書だけを読ませても、AIはあなたの会社の強みを知りません。知らないままでは、どうしても平均点の提案になりやすいのです。
まずやるべきは「自社理解」をAIに渡すこと
プロポーザルでAIを使うなら、先にやるべきことは仕様書の読み込みだけではありません。
先にやるべきなのは、「自社の情報を整理してAIに渡すこと」です。
具体的には、以下のような情報です。
・自社の強み(他社との差別化ポイント)
・類似実績(行政案件、業界実績)
・実施体制(人員、役割、対応範囲)
・業務の進め方(再現性、品質管理、報連相の仕組み)
・過去に評価されたポイント
これをAIに読み込ませておくと、仕様書を見たときに
「どの要件に、どの自社の強みをぶつけるか」
という発想が出やすくなります。
難しく考えなくても大丈夫です。最初は、会社説明のPDFや営業用の類似実績資料などでも十分です。
もちろん、データ容量が大きいと読み込みしにくいことはありますが、使える形に整理して渡せると、その後のネタ出しがかなりスムーズになります。
ここが、単なる要約と、提案のネタ出しの大きな違いです。
※念のためですが、機密情報や個人情報は入力しないようにしてください。社名・担当者名・未公開情報などは伏せる運用が安全です。
仕様書×自社情報で「提案のネタ」を作る
次に、仕様書と自社情報を組み合わせて、提案のネタを作ります。
ここで大事なのは、「いきなり完成版の提案書をAIに作らせないこと」です。
AIに出してもらうのは、たとえば次のような内容です。
・評価されそうな論点の仮説
・自社が強く出せる切り口
・提案の柱(3本程度)
・想定される懸念点と先回り回答
・差別化メッセージの候補
この段階で重要なのは、文章のうまさよりも「方向性の質」です。
提案書本文を作る前に、まず「何を武器に戦うか」を見える化する。ここが行政営業におけるAI活用の効きどころです。
行政向けプロポーザルは、仕様書に沿うことが前提なので、どうしても提案が似やすくなります。
だからこそ、AIには本文づくりの前に、「差別化の材料を掘る役」をやってもらうほうが効果的です。
上司にネタの方向性を確認してから、提案書を作る
ここは実務上かなり重要です。
AIにネタを出させたら、いきなり提案書を作り込む前に、「上司に方向性を確認」します。
確認したいのは、たとえば次のような点です。
・今回どの強みを前面に出すか
・価格・体制・実績のどこで勝負するか
・守りの提案にするか、攻めの提案にするか
・過去案件との整合性はあるか
この確認を先にやると、後戻りが減ります。
逆に、方向性確認を飛ばして提案書を作ると、「文章はできているのに、内容(方向)がよくない」という一番つらい差し戻しが起きやすくなります。
これは誰かに言われたわけではなく、私自身の反省でもあります。
以前の私は、提案書まで作ってから確認してもらうことが多かったです。
でもそれだと、
・確認に時間がかかる
・上司の時間も取る
・差し戻しが起きると修正コストが大きい
と、正直あまりいいことがありませんでした。
双方にとってメリットが薄い進め方だったなと、あとで気づきました。
何より、自分が上司の立場になったときに、同じやり取りはしたくないなと思ったのです。
AIで時短したはずが、やり直しで時間を失う。これは避けたいところです。
まとめ|AIは「提案の質を上げる補助輪」
行政営業でのAI活用で大事なのは、AIに仕様書を読ませること自体ではありません。
大事なのは、「仕様書の前後でどう使うか」です。
・仕様書の前:自社理解をAIに渡す
・仕様書の後:提案の方向性を上司と合わせる
・そのうえで提案書本文を作る
この順番にするだけで、AIは単なる要約ツールではなく、提案づくりの強い補助輪になります。
プロポーサル作成の効率化だけでなく、提案の再現性も上がっていきます。
AIを使うと、提案書が一瞬で完成する。そんな期待をしたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、実務で本当に効くのは、「完成を丸投げする使い方ではなく、判断の前後を支える使い方」です。
もしこれから行政向けプロポーサルでAIを使うなら、まずは「仕様書を読ませて提案書を作れる」で終わらせずに、
「自社情報を入れたネタ出し → 上司確認 → 提案書作成」の流れを試してみてください。
それだけでも、提案の質とスピードはかなり変わってくるはずです。


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